エンターテイメント研究会 ~ピアノの森:自己否定から自己肯定の心理~

  1. HOME > 
  2. エンターテイメント研究会 ~ピアノの森:自己否定から自己肯定の心理~

『音が聴こえるマンガたち』from ピアノの森


音楽と音楽する人たちのマンガがふと、思い出されまして。

音楽といえば定番かな、
のだめカンタービレが今は有名ですが
私の音楽マンガの定番は、こっちです。

「ピアノの森」

これも定番の一つですかね。

アニメ化されているの知らなかったわー、
うーん、観たくないわー。
と、いうか、聴きたくないわー。

ピアノの天才少年と、その周辺の人たちの
物語です。

マンガという二次元が、
音という違う次元を語ろうとするのは、
めちゃくちゃ難しい反面、
絵の広がりが音のダイナミズムを
実際の音以上に描けるっていうのが凄い。

読み手の中にある音の感覚を
目一杯引き出してくれるんですよね。

これができるのが、
音楽を描く、音楽やってる人を描く
マンガのポイントなんだろうなあ。

これを読んでると、
「天才っていうのは、
努力できる才能を持った人のこと」っていう言葉が
すんなり納得できちゃう。

と、同時に
天才と同じ時期に、
同じ分野で出会っちゃう努力の人の
絶望もしみじみ感じちゃう。

アマデウスという映画もそうでしたよね。
天才を聞き分けるだけの
音楽の才能はあるけれど、
同時に、自分の限界も分かっちゃう悲劇。

サリエルの苦悩は、才能ある人の、
やはりある意味、選ばれた人ゆえの
苦悩なんだと思うのです。

ピアノの森にも、
そういうシーンがあります。

映画の中でも、ピアノの森にも
出てくる苦悩の正体は、
自己否定感。

憧れは、憧れの対象をめざして
私たちを高みに連れて行ってくれることが
多いです。(モデリングといいます)
けれども、時に強烈な憧れは
そこに到達しない自分への強い否定感として
働くことがあるのです。

憧れに自己否定が調剤されると
妬み、嫉妬、破壊欲、支配欲
もろもろが生み出されてきます。・・・

ピアノの森には
親子二代にわたる、この「憧れと自己否定感」が
描かれています。

そう、主人公に対してあこがれ続けながら
主人公のようになれないとあがく修平君と
「癒しのピアノ」と呼ばれ、
ピアノの世界の大変人気のあるピアニストになっているのにも関わらず
阿字野先生にこだわり続ける修平君のお父さんです。

こんなに評価されて、こんなに求められていて
おそらく、ある程度自分のピアノにも
満足もし、肯定感もあるのに、
若いころに持ち続けていたコンプレックス(劣等感)が
無意識に息子を追い詰めることになります。

そして、修平君は、
逆転移したお父さんの無意識の支配の中で
苦しみます。
一ノ瀬海という強烈な天才、
憧れ、コンプレックス・・・かつて、
自分の父親が阿字野先生に抱いていたような。

コンプレックスの多くは
比較から生まれるんですよね。
自分はあの人よりこれができていない
自分は世間の水準よりここが低い

本当は、比べるものではないことを
比べてしまうから、苦しいんですよね。

特に、「価値」なんてことを比べ始めると
本当に追い込まれてしまう・・・
一ノ瀬くんへのあこがれとコンプレックスに苦しみ続ける修平君の姿、
そして、やっとつかんだ「自分が自分の価値を見つけていくこと」への
気づきのステップには、感動します。

ピアノの森は、
「あなたの価値はあなたが見つけて育てるんだよ」
「どんな人も、天才なんだよ」
って、教えてくれるすごいマンガです。

ピアノの森イメージ

天才しか出来ないことと
天才ではなくても
素晴らしい力を持った人では、
きっと役割もできることも違う。
人は、
それぞれにしか出来ないことを
見つけていく力を誰もが持っている。

それに気がついていくことが
きっと生きかたの才能なんだと思います。

ありがたいことに、
この才能だけは、例外なく誰もが
持たせてもらっているものなのでしょう。
私は私なりに、
心理学を学んだことで
その才能を持たせてもらったかなと
感じています。

ああ、それにしても
このマンガを読むたびに、
ここの場面のピアノ聴きたいって
切実に思うのだけど、

無理だなあ。

だって、このマンガが描いている音楽は
自分の魂だけが知ってる
天上の音楽だから、
きっと何聴いても
チガウって思っちゃうんだろうなあ。

ああ、でも聴いてみたい。

そんな不満を持っちゃうマンガなのでした。


投稿:主任研究員 織田 貴子(上級プロフェッショナル心理カウンセラー、アイディアヒューマンサポートサービス所属)


自己否定、自己肯定の心理について
詳しく知りたい方はこちら
  • 友だち追加
  • お友達登録された方には無料体験講座クーポンをプレゼント

  • 浮世満理子@心のケアの専門家 Twitter アイ・ディアヒューマンサポートアカデミー 東京本校 Facebookページ