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vol.25 義田 貴士
スポーツジャーナリスト
アイディアメンタルトレーニングセンター
メンタルトレーナー
日本の野球は伝統と進化、
知性と技術を兼ね備えた最高のエンターテイメントだ。
解説
勝負は必ずしも実力だけで決まるものではない。
これは、義田氏が講師を務める「プロフェッショナルのメンタルの流儀」での講義の一部で言っていることだ。 観客、時代、勢いなど、勝負を決するのは実力だけではない。それが勝負を難しくする。
「たとえば、ずっといい調子で打てていたのに、今日に限って打てない。けれども、それは自分の調子が悪いのか、相手の調子がいいから打てないのかは、絶対にわからないんです。打てないという事実だけが目の前にぽんとあって、なぜ打てないのかの理由はわかりようがない。開き直って、「いやいや、たまたま今日は相手がよかったんだよ」なんて言い放つこともできない。プロだから、自分がチームの大黒柱という自覚があるから、自分が打たなきゃいけないんだという責任もちゃんと持っている。だからこそ、打てないという事実がずっと残る。」
ここで引きずってしまえば、スランプに陥るところだが、一流のプロはそんな風には引きずらない。引きずらずに、どうしたら打てるかという探求を続ける。
「だから、いつもの自分を知っておくということが大事なんです。いつもの自分を知っていれば、本当に自分が悪いならそれとわかる。」
こうやって、プロたちは自分たちを進化させていくのだろう。
それは、今の言い方で言えば「自己の探求」だ。しかし、言い方は違っていても、結局一流と言われた人たちは、みなそうやってきたのだ。
「たとえば、伝統的に大切なものはあるはずです。礼儀や先輩への敬意など日本ならではの大切な心の伝統は否定できない。古くさい精神論と言われても今まではそういうやり方で選手を育ててきて、活躍する選手になっているわけだから、勝てる選手を育てるということにおいて、間違っているわけじゃない。けれども、いつまでもそれだけではなく、たとえば自分がやっているメンタルトレーニングもその一つですが、新しい技術ややり方や考え方も出てくる。そうやって、伝統と進化が対立するのではなくて、混合しながら全体は進んでいる。そんな気がしてならないんです。」
アイディア式メンタルトレーニングとしては?
メンタルトレーニングには「自分の思い込みの枠を外す」という一面があります。
アスリートは、身体的技術や能力だけで優れた実績を残しているのではなく、深い洞察と探求を重ねて勝利をめざし、限界を突破していきます。どちらかを○、どちらかを×と一概に言い切れないのが、現実なのです。
メンタルトレーニングでは、常にゴールから逆算で仮定し考えます。目標達成、あるいは勝利という「結果」から、何をすることが一番勝率が高くなるのか、成功率があがるのかということを考え抜いていくのです。その時に一番気をつけなければならないのが、自分がもっている「概念」。自分の中に潜む自分でも気がつかない価値観のことです。
正しいか正しくないかを、私たちはほぼ無意識に自動的に判断してしまっている。その根拠の多くには「理由」もなくて、「自分がよいと思った新しい考え」を○とする、あるいは「今までそれでやってきたから」で○としているだけで、○か×かよりも「勝つためには何がいいか」を考える自由な発想がキーワードとなります。 日本の野球界は、数多くの名選手を生み、たくさんの奇跡を、伝説を生み出してきました。そこにあるのは、古き考えと新しき考えのせめぎあいでもあり、勝つために次々と生み出されてくるトレーニングやメンタルの技術。日々の進化の後ろには、ゆるぎない勝利へのモチベーションと、努力がある。その果ての今の野球界であり、今のアスリートたちの姿があるのです。
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