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vol.24 米田 功
アテネ五輪金メダリスト
アイディアメンタルトレーニングセンター
メンタルトレーナー
世界のトップになるための大切なメンタルとは、
世界王者にふさわしい自分たちであるとチーム全員が信じていること。
解説
アテネオリンピックの前、日本の男子体操チームには、メダルの期待はかかっていなかった。ずっと成績が振るわず、テレビで流れる「メダル予想」にも男子体操の文字はなかった。
米田氏は言う。
「たとえば、柔道は毎回メダルを取っていて、どうやって何度も何度も取れるんだろうって考えたんです。柔道チームにはいつも一番期待がかかっていて、メダルを取らなかったら日本に戻って来れないぐらいのプレッシャーがかかっている。そういう力がないとだめなんじゃないかと思ったんです。誰も期待していないのに、メダルなんか取れるはずがない。だから、団体金メダルという目標をできるだけ口にしていきました。」
取材が入れば「目標は団体金メダル」と自ら宣言し、チームメンバーには、食事や入浴の場面で語りかけた。
「俺たち、金メダル取れると思う?」「どうやったら金メダルが取れるだろうか?」
実は、アテネオリンピックで金メダルが取れるかどうか、実力的には可能だと米田氏は考えていたという。
「オリンピックの勝敗は、その場にならないとわからないようなものではなくて、実はオリンピックが始まる前に世界大会やいろんな試合で、ある程度どの国が強いか、どの選手が強いかってわかっているんです。そこから考えると、日本だって力を持っていた。確かに中国やアメリカは強いけれど、日本だってやれる。後は、どうしたらその力を最大限に引き出していくかということを考えました。」
それが米田氏が行った、「金メダル」への問いかけだった。問われれば、選手は「どうしたら金メダルが取れるんだろう」と考え始める。
「あの国が強い、この国が強いと言ってはいても、でも、自分たちだってここがすごいとかこれは負けないとか、プラスの要素を言い出し始めたんです。そうやって、どうやって金メダルをとるか、って話をしているうちに、『俺たちは金メダルを取れる』という風に思考が変わってくる。金メダルを取る自分たちだというふうに自分たちに自信を持つことができたんです。」
チームのメンタルを金メダルに導いた米田の問いかけは、いったいどういう意味があったのか。
アイディア式メンタルトレーニングとしては?
頂点に立つと考えたときに、ずっと憧れめざしていた場所に立てる喜びや興奮と共に、本当に立っていいのだろうかという疑念がわいてくることがあります。
実は、オリンピックのような頂点を極める試合の時には、この一瞬の疑念が集中力を削ぎ、致命的な失敗につながることも少なくないのです。
頂点を極める究極の試合に必要な安定感は「自分はOKだ」という強力な自己肯定感。金メダルにふさわしいアスリートであると心から強く信じられるメンタリティが、あの奇跡のような演技を生み出す力になるのです。
金メダルが取れるんだろうか、と不安を胸にしながら試合会場に入るのと、自分たちは金メダルにふさわしいと信じて試合会場に入ることをイメージしてみてください。どれだけ自分のメンタルが勝利に向かっているか、モチベーションがあがっているかすぐに想像できることと思います。
「自分は勝利者にふさわしい」という絶対的な自己肯定感と、勝つ自分のイメージ。
米田氏の「どうすれば世界のトップになるか」という問いかけは、チームメンバーに「どうしたらトップになれるか」「こうやったらトップになれる」を繰り返しイメージさせ、結果的に「トップになれる自分たち」のイメージを定着させることにつながった、いわば最も強力で奇跡的なイメージトレーニングだったとも言えるのです。
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