体操種目別決勝

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2008年メンタルトレーナーからみた北京オリンピック

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現地リポート photo

8月19日 火曜日

体操競技 最終日

今日は、いよいよ体操競技の最後の日です。

やはり、この4年間。ずっとメンタルトレーナーとして体操に関わってきた者としては、北京オリンピック最後の日、ということで、なんだか感慨深いものを感じます。

思えば、4年前。
アテネオリンピックの体操の決勝戦に私たちはいました。 体操競技における、メンタルとはどういうことか。 世界のトップになる選手とはどんなメンタルを培っていけばいいのか。 それだけを考えてきました。 選手がただその時だけを考え、オリンピックだけを照準に生きてきたのと同じように、私たちもこのオリンピックにすべてをかけて、活動してきました。

そんなにオリンピックの仕事がしたいのですね、と言われることがありますが、実はそうではないのです。 私が体操競技と出会ったきっかけになったすばらしい監督がおられました。
その監督は、日本のトップアスリートであるだけでなく、後輩の育成に熱心で温かく聡明な方でした。その方が「世界で通用する選手になるには、本当にメンタルが大切だ」と私たちに選手のメンタルトレーニング依頼をして下さいました。

その監督は私たちにこう依頼をされました。「世界のトップ選手になれるメンタルトレーニングを」 その言葉がその日から、私たちのミッションになりました。心理学の学術的なことだけではダメ、かといってスポーツ心理学だけでも足りない。 理屈ではなく、選手一人ひとりをしっかりと見て、関わり、話を聞き、心を理解する。

選手が自分ですら気がつかないメンタル面の微妙な揺れ動きを察知し、それをそっと消したり、支えたりする仕事が私たちの仕事だと思っています。だから、体操選手の試合はできるだけ多く見ました。 いえ、よっぽどの事情がない限り全部見ました。 練習場所の体育館にも毎週往復3時間かけて通いました。 理屈だけで「あなたのメンタルは・・・」とは言いたくなかったし、 何よりも、試合の時にどんなふうに緊張するのか、練習のときにどんな形でモチベーションが落ちるのか、いい時だけではなく、選手が辛い時、苦しい時にこそ、そばにいるべきだと思って「いつも居続けるメンタルトレーナー」でありたかったのです。

地方の試合のときは試合だけ見学気分で見に来るのではなく、選手と一緒に会場練習の時から参加。 特に移動中は、選手のメンタルが意外とわかる貴重な時間でしたから、 条件が許す限り一緒に移動させていただきました。 試合では神様みたいなすごい存在になる彼らが、一人の人として悩み苦しみ、それでも逃げずに戦い続ける。 それを1ミリでも支えるのが私の仕事でした。

それだけ、びっちり関わっていると、あまり量はこなせないのは当然で、体操競技以外の大きな仕事はほとんどキャンセルした4年間でした。
個人的にも、結婚や出産などの人生のイベントを、「北京までは」と先送りして臨んだメンタルトレーナーチームでした。間違いなく、私たちの4年間は、誰に聞かれても胸を張って誇りにできる「最高の時間」にできたと思っています。

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体操競技はこの日、平行棒と鉄棒の演技でした。
女子は平均台でした。

最後のこの日は、団体決勝で感じたような緊迫感はありませんでしたが、すでに10日以上も戦い続けている選手たちの集中力が切れないかな・・・というのが心配でした。もちろん選手たちは集中力が切れるという自覚はないのですが、この自覚がない状態というのが意外と曲者です。
私たちでも海外にいくとやたらテンションが上がって、毎日過ごしますが、一週間も経つと変な疲れ方をしてきて、ものを忘れたり、時間を勘違いしたりしますよね。これが「興奮疲れからくる集中力の低下」なのです。

この日はやはり、ちょっとしたミスが連発。
女子の平均台でも中国の選手と日本の鶴見選手は落下してしまいました。
鶴見選手ははじめから硬い表情でしたね。もっとリラックスして、息を吐いて・・・と声をかけてあげたくなるくらいでした・・。しかし、担当していない選手はなかなかそんなアドバイスもできないのが、残念。 まだ若いから、これを力に絶対にいい選手になってくれるものと信じています。
平均台で優勝したアメリカの選手は一番、のびのびとリラックスしていた印象がありました。特に呼吸の意識の仕方が抜群で、のびのびと演技をしている印象。そうなんです。適切に脱力している選手は演技がのびのひと見える。 つまり、演技そのものが大きく見えるんですよね。

男子はダイナミックな技の連続でした。 種目別ともなると、息をのむような大技の連続です。 どの選手をとっても世界のトップ選手にふさわしい素晴らしい演技でした。
時々、ビジョンから見える「表情」から、かたさが伝わってきます。 リラックスといっても、気を抜いている訳ではありません。
ぎりぎりに研ぎ澄ました状態で、余分な力みが抜けているのです。日本の二人の選手も頑張っていました。ベテランの富田選手は、いつものように落ち着いて安定した表情でした。
技と、体力と、テクニック・・・そしてメンタリティの戦いでした。
最後の鉄棒は、さすがにのびのびとしていると感じる選手は一人もなく、あえて言うならやはり優勝した中国の選手は地元の応援を味方につけて、一番のびのびしているようには感じました。

でも、会場の応援は、自分の力にこそすらなれ、他国の応援で集中力が乱されるような選手はいません。
(ときどき、中国の大声援で日本の選手がやり辛いのでは?という意見を聞きますが私が感じる限り、トップクラスの選手はそんなに「やわ」ではありません。
ドイツの世界選手権でも地元ドイツの応援がすごかったですが、それにめげる他国の選手はいないように感じました。)

そして、すべての種目が終わり、北京オリンピックの体操競技の全種目が終了しました。

そのあとトランポリンの決勝が行われました。トランポリンも以前個人的にメンタルトレーニングのお話を頂いたこともあり、興味を持って見ていました。 やはり、トランポリンも奥深いですね。体に力が入るとミスをしたり、縮こまって見えると感じました。

すべて終了。

外に出ると、肌に心地よい、北京の夜の風。 北京は、太陽が落ちた夜に、急に涼しくなります。 鳥の巣の広場はたくさんの家族連れで賑わっています。 地元の子供が体に凧をつけてもらって、きゃっきゃっとはしゃぎまわっています。 長い戦いが終わった心地よさと充実感を感じました。
そして、また次にむけて・・・新たな意識が始まった日でした。

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