メンタルトレーナー
橘 智子
北京オリンピックから帰って来ました!
北京へ、メンタルトレーナーとして現地に行き、可能な限りいろんな競技を観戦してきました。ただ私自身にとって今回のオリンピックは初めてではないのです。実はアトランタオリンピックにも行ったことがあるんですよ!その時はいち日本の応援団(観客)として観戦をしていました。
でも今回は違います。メンタルトレーナーとして現地に赴きました。自分自身これまでの自分と、メンタルトレーナーとして見るオリンピックと、どう違うのかとても興味がありました。これまでの自分は、ただただ日本の選手に頑張ってほしい!悔いなく戦ってほしい!と思って応援していました。いま思うと“悔いなく戦う”ってどういうことなのかわからずに思っていたんだと思います。私はメンタルトレーナーになり、いろいろ感じることのひとつとしてよくあるスポ根的な言葉の意味を本当にわかって使っている人ってどれくらいいるのかな…って思います。
「おまえここ集中しろよ!」と言われ、思わず「はいっ!」と答えていても、実際は「いまどうしたら集中できるのか?」、「集中できている状態がどんな状態なのか?」ということを、きちんと自分自身でわかっているのかと言うと、実は多くの人が「なんとなく…」だったりするのです。前述した「悔いなく戦う」も同じです。自分にとって「悔いがない」というのはどういうことなのか?
これは常に自分自身と向かい合っていないと、自分でわかったつもりでいても、わかっていなかったりする。「人に言われたからそんな気がする」ということは、みなさんにも経験ありませんか?
今回の北京オリンピックで、男子陸上4×100Mリレーで銅メダルというすばらしい快挙をなし得た、朝原選手がそうだったのではないかと思います。彼は今回の北京オリンピックの前に、一度引退宣言をして現役を退いていました。ただその後奥様からの一言で、もう一度自分の可能性に賭けてみようと現役を復帰してのオリンピック出場でした。特にアスリートは年齢的な問題、体力的な問題、結果がでないことによるまわりからの評価などが自分自身の限界を勝手に作ってしまうことがあります。「まだやりたい」「まだいけるはず」と心の奥で思う気持ちにフタをして、自分を納得させようとしてしまうのです。
朝原選手は引退を宣言したものの、その後このフタが開いたり、閉じたりしていたのではないでしょうか?その中で葛藤する朝原選手の姿をずっとそばで見てきた奥様が本当の意味で「悔いなく戦う」ということに、そっと背中を押して差し上げたのかもしれませんね。今後は後輩の指導者になると言っていた朝原選手の顔は本当に「悔いなく戦った」という達成感と安堵感に包まれていたように見えました。
ほかにもオリンピックを現地で見てきて、いろんなことを感じました。それは時として国境を越えたところで感じるものもありました。金メダルという最高の結果を出し、涙する選手たち。思うような結果が出せず、涙する選手たち。どちらの選手もこの日のために人生のすべてをかけて、4年という月日を過ごしてきたのだろうと思うと、最高の結果を出せた選手には惜しみない賞賛の拍手を送りたいと思うし、たとえ結果が出せなくても、自分ができると思うことのすべてをやり尽くしこの世界最高峰の舞台に立っているあなたは本当にすばらしい!と、結果を出せなかった選手たちにも敬意を表したいと心から思いました。
これはいままでの私にはなかった思いです。どこか日本という国、メダルという結果でオリンピックを見てきたと思います。でも今回は違います!まるで人生の縮図を見ているかのような、目の前で起こる壮絶かつ感動のドラマを見ることができたのは、これからの私の人生ににとって貴重な財産になりました。出場したすべての選手に、心から感謝の気持ちでいっぱいです!「本当にありがとう」そしてロンドンに向けてアイディアのメンタルトレーナーチームは、さらにパワーアップしていきます!ロンドンオリンピックでは、あなたもメンタルトレーナーとして参加しませんか?