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選手を見送った直後、再び雨脚がひどくなります。
つまり、選手たちはスタートと同時に激しいスコールに見舞われて、真っ暗な闇の中を、ただただ前に進むことになります。体力は消耗しないのか、雨に濡れて体温は下がらないのか、心配をしながらも、私たちはしばらく木陰で雨を何とかしのぎ、ようやく雨が小降りになったところで、それぞれのスタートが開始されます。
佐々木さん、尾下さん、吉田さんは今からバスで移動して、目的の地点へ。
そして残りのスタートからゴールチームは、荷物を抱えながら、10キロの道をランナーのコース沿いにゆっくりと歩き始めます。
ランナーたちの列は、途切れることなく、ゆっくりといつまでもいつまでも、道を埋め尽くす人たちが次から次へとやってくるようでした。歩いている人、ゆっくりと走っている人、途中の給水所には、紙コップが散乱し、多くの人たちが、わずかな水を口に運びながら、前へ前へと進んでいく姿が、想像できました。そういったランナーたちのさまざまな姿を写真やビデオにおさめながら、スタートからゴール地点まで、ゆっくりと私たちは歩きます。しばらくした時、選手の記録を登録していた携帯電話が鳴りました。
村田さんが通過していきました。
途中の通過地点にいるチームたちからも、無事通過の連絡が次々と入ってくるたび、私たちは大きな歓声を上げて喜びました。続いてウッチーが通過。最後は鈴木君です。ウッチーは、10キロ地点ですでにもう苦しそう。のどに負担を抱えている彼が、どんな形でマラソンという過酷な酷況の中で、息を保ち続けることができるのか、すごく心配でもあり、いてもたってもいられない気持ちにもなります。最後に笑顔で通過していった鈴木君。彼は、きっとマイペースで、自分なりの楽しみ方でこのホノルルを走り切ってくれるに違いありません。
やがて、ゆっくりと朝が明けていきます。そこにはきらめく光はなく、今日はどんより曇り空。気持ち的には、少―し大丈夫かな、と思わせるような空でしたが、この薄―く覆われた雲が過酷な太陽をさえぎる柔らかいヴェールとなって、選手たちをどうぞ守ってくれますように。そういうことを願いながら、私たちは途中でコーヒーを飲み、自分たちのエネルギーを補給しながら前に進みます。
それぞれのポイント地点でがんばる仲間たちも、選手を必死で探しているはずです。3万分の一人、それを4人。何時間も何時間も、たった一瞬のその通り過ぎる時に「がんばって」と声をかける、それだけをするために。
選手は朝ごはんを食べたのかなぁ。応援をしている私たちに、不安はつきません。途中のチームに連絡をして、お水を持っていってもらおう、バナナを手渡してみよう。結局、選手は食事は摂っていたようです。そして、大阪の福田さんはバンドエイドやさまざまなランナーを支援するためのグッズを、自ら考えて持ってきてくれました。心遣いは、何か特別なことではなく、私たちが考えて相手の気持ちになってイメージをしてだしていくもの。