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疲れた顔をしながらも、途中で笑顔を失くしても、また笑顔になれる。それがマラソンの魅力かも知れないし、仲間の魅力なのかも知れません。鈴木君は5時間台でゴールしました。
そして最後、うっちーこと内田君。ふたりがゴールしてから、なかなかうっちーの情報が入って来ません。目の前にリタイアした人達がどんどん運ばれて来る姿を見て、何度もリタイアをした人のバスがどこに着くのか確認をしに行きました。うっちーを信じていなかった訳ではないけれど、ランナー達は携帯電話を持っていないので、もし途中で何かアクシデントがあって運ばれて来た時、電話で私達と連絡が付かずに、どこかこのゴール地点のどこかでひとりでいるとあまりにも寂しいと思ったからです。
だから、何度も何度も確認をしに行きました。
ところがその時、うっちーは自分の病気と闘いながら、自分の身体を何とかごまかしながら、それでも歩いたり走ったりしながら、一歩ずつ前進していたようです。
4ヶ月かけて頑張ったトレーニングの成果は、20キロ地点までだったと言います。どれだけ自分が身体に力を入れないように、身体をうまく使うトレーニングをして、前に進むことを覚えていても、20キロを過ぎた辺りから、自分の身体はばらばらになりそうになり、どうしようも進まなくなったと言います。
後は、自分の身体とどう付き合うのか、この動かなくなった身体をどう前に進めていくのかしか考えなかったと言います。30キロ地点を過ぎた時には、それも考えられなくなっていた、ただもう、気力だけが自分の身体を前に前に進めていく、そんな姿だったと言っています。
33キロ地点、うっちー通過の連絡。
お母さんと手を取り合いながら喜びました。涙が出そうになりました。もうすぐうっちーが帰って来る。全員がゴールできるかも。皆の中で、6時間を越える長い時間をずっと立ちっ放しでいることは忘れていました。特に先にゴールをしていた、村田さんや鈴木君やは長い闘いを走り抜いて来た為、足も腰も、もうぼろぼろのはずです。
「私達が最後までいるから、皆はホテルに帰って休んだら?」
と、私が声を掛けても、
「うっちーがもうすぐ戻って来るから、最後までいるよ。大丈夫。」
と、彼らは笑顔で言います。